開かれた魔法

本は開かれている。時を超えて、国を超えて。自分の枠を超えてどこまでも行ける気がする。そんな本の魅力にとりつかれた女子の書評ブログ。

2018-01-01から1年間の記事一覧

サラバ!

「愛している」と今まで何度口にしたことがあるだろうか。私は日本語だと記憶にないのでおそらく0回だが、英語では幾度となくi love you を伝えてきたと思う。友人へのメールの最後にlove from と綴るほど、愛はありふれた表現だ。なのに、「愛している」と…

沼地のある森を抜けて

あれは小学校の国語の授業のときのこと。物の目線で詩を書くというお題が与えられた中、床の視点で書いた同級生がいた。床はみんなに踏まれて可哀想という詩の内容よりも、私には、床を一個のものとして捉えていることが印象的だった。鉛筆や消しゴムは一個…

この世で一番美しい食べ物は鮨だと思う。宝石のように鮮やかな色形。まるで芸術作品のような佇まいでありながら、生命の躍動感がぎゅっとつまっている。口に入れると自然の恵みと職人技が絡み合って、ほどよく口の中で溶けていく。私は今生命をいただいてい…

TUGUMI

吉本ばななのみずみずしい文体が紡ぎ出す物語は、荒井由美時代のユーミンの世界観を彷彿とさせる。そう感じるのは私だけだろうか。どこか懐かしくて、切なくて、甘酸っぱくて、やさしい。まっすぐで、儚くて、セピア色に溶ける景色。10代の頃心に流れていた…

炎上する君

人生という旅路の途中でつまずくタイプの人間は、ある意味真面目過ぎるのだと思う。 社会の暗黙のルールに疑問を持ったとしても、答えの得られない疑問は素通りして、自分が疑問を持ったことさえ忘れて生活できる人もいる。その一方で、まるで心の港にいかり…